2019春の旅 2日目
お義母さんは早起きだ。
私もダラダラ寝てはいられない。
片付け下手なお義母さんのキッチンは物を置くスペースがないので、調理をする時はそこにある物を他の場所に移動しながら行なう。
何をするにも1回1回場所の確保から。
恐ろしく非効率だ。
手伝いながらストレスが溜まりまくる。
それに、お義母さんはずっと喋っている。
その音量は、人に話しかける時もリンちゃんに話しかける時も独り言を言う時も全部一緒なので、それを全部聞いてしまう私は非常に疲れてしまうのだ。
ダンナもよく喋るが、それに輪をかけてよく喋る。
長年ダンナと一緒にいて「ダンナの話しは全部聞かなくても大丈夫」ということを学習した。
ダンナの話しを全部聞いて返事をしたり対処したりして疲れていたが、実際は独り言の時もあるし、なんなら聞こえないふりをしてもダンナには支障がない。
「無視された!」などと傷ついたりしない。
何故かと言うと、全くどうでもいい話しをなかなかの音量で話しているだけだからだ。
私が「どうでもいい」と思うだけではなく、本人も「どうでもいい」と思っているので返事がなくても「どうでもいい」のだろう。
その技をお義母さんに発動すればいいのだが、それがかなり難しい。
やはり年に1~2回しか会わないので「どうでもいい」話しなのかどうか判断できないからだ。
できる限り全部聞いて、お義母さんの動きを見ながら対応するしかない。
少し前の週間天気予報では雨だったが納骨式当日は快晴、暑いくらいだった。
11時に住職さんがいらっしゃった。
打ち合わせなどがあるらしく、挨拶の後お義父さんと和室に入って行った。
これから、みんなで食事をしてから霊園に行くとのこと。
私たちは喪服に着替えて準備する。
お義母さんは何をバタバタしているのか、リビングを出たり入ったりしている。
では行きましょう!と、みんなが外に出て行ったので、私は玄関でお義母さんを待っていた。
すると「ぷちこさん先に出ててー!」と声がする。
外では、みんながまだ車に乗らずに待っていた。
3分経っても5分経っても、お義母さんは出てこない。
出てこないのはいつものことだが、今日は住職さんがいるのだ。
ダンナが様子を見に行き、ようやく姿が見えたお義母さんは大小の手提げ袋を3つ持っていた。
近くの料理屋さんで食事
住職さんと食事なんて緊張するわ~と思ったけど、お義母さんとダンナがお喋りさんで良かった!
私はお茶をつぎ足す係に徹したwww
美味しかった~♪けど、こんなに食べきれない。
お持ち帰りできたらいいのに。
お義父さんもお義母さんも、この料理屋さんに来たのは久しぶりだったそうだが、お会計の時に「もうすぐ店をたたむ」と聞いて寂しがっていた。
霊園の事務所で手続きをしてからお墓へ行くと、霊園のかたが2人と石材屋のかたが2人待ってくださっていた。
大きなパラソルが2つ用意されており、1つはお墓の正面に住職さん用。
もう1つはお墓の横に私たち用で、折りたたみ椅子が5脚並べられている。
陽射しが強い日だったので本当に助かった。
霊園のかたの司会で式が始まった。
納骨と同時に墓石を新しくする。
今までの墓石にはお義父さんの父親=ダンナのおじいちゃん、つまりこのたび納骨するおばあちゃんの旦那様の法名が彫られていた。
お義父さんの父親は、軍医として出征しニューギニアで戦病死した。
当時29歳だったという。
お義父さんは2歳だった。
機会があれば、このブログにおじいちゃんのことを書いてみたいと思う。
戦後すぐに作った墓石なので文字が読めない状態になっていた。
おばあちゃんの納骨を機に墓石を新しくすることにしたそうだ。
石材屋さんが2人がかりで今までの墓石を下ろし、石台をずらして横に持ち上げる。
その間、霊園のかたが骨壷の御骨を白い袋に移した。
ずらした石台の下の地面を少し掘り、そこへお義父さんが御骨を納めた。
石台を元の位置に戻し、その上に新しい墓石を乗せて墓石用の接着剤で固定した。
きちんと作業の説明をしてくれて、丁寧かつスピーディーな仕事っぷりだった。
その頃お義兄さんから「最寄り駅からタクシーに乗った」と電話があった。
お義兄さんが到着すると、住職さんに読経していただき、お焼香をして手を合わせた。
法話を聴聞させていただいたあと、お義兄さんがチャランゴで琵琶湖周航の歌を演奏してくれた。
住職さんが「今日は琵琶湖を見てずっと琵琶湖周航の歌が頭の中に流れていたんです。♪仏の御手に抱かれて~♪素晴らしいですね」と仰り、石材屋のお兄ちゃんも「お墓で演奏を聴けるなんて思いませんでした」と感動していた。
音楽家ってこういう供養ができて羨ましい。
新しい墓石には、おじいちゃんとおばあちゃんの法名が並んで彫られている。
75年の時を経て並んだふたり。
ふたりで一緒に並んで琵琶湖を眺めている姿を想像して、切ないけど微笑ましい気持ちになった。
感動的に終われたら良かったのだが、そうはいかない。
帰りの車の中でお義母さんが騒ぎ出した。
「あー!おばあちゃんの写真持ってきたのに車に乗せっぱなしだったわー!」
(o゚ω゚)チーン