母の呪縛
母は寂しいんじゃないだろうか?
私たちが日々忙しいのをわかってるから、会いに来てって言い出せないのかも。
私は妹にそう話した。
そして妹の仕事がお休みの日と母の通院日が重なった昨日、妹も一緒に行って3人でお昼ごはんを食べようと提案した。
母の今の家で母と食事をするのは初めてだ。
母はいつも病院受診の帰りにスーパーマーケットでにぎり寿司を買う。
通院日はにぎり寿司を楽しみにしているのだろうから、私は二人分のお弁当を作って行った。
食べながら話しをする。
「デイサービスの人たちは私より歳上なのによく食べるんよ。私なんかご飯少なくしてもろうとるのに食べきれんちゃねー」
「毎日ここに横になって、お腹が空かんでも時間がきたらごはん食べて薬飲んで、また横になるんよ」
「たまには散歩でもすれば?」と妹が言う。
母は「アンタには話してなかったけど前に道で転んだんよ。ゴミ捨てに行った時はよろけてペットボトルの山の上に倒れたけ怖くて外に出れんのよ。私一回そんなんあるとダメなんよ」
妹は「じゃあ家の中で運動すれば?」と言う。
母は黙る。
私が「M子ちゃんの誕生日に電話してあげたん?」と母に聞くと「したよ」と言う。
「S子もK子もM子も(母の妹たち)みんな元気よねぇ、私だけ弱っとる」と、また言い出した。
私「K子ちゃんが毎日やりよるストレッチ教えてもらったやろ?何でやらんと?」
母「歳やから」
妹「違うやろ!運動キライなんでしょ!」
母黙る。
(^o^;)ああ~やっぱりこうなるか。
私「ママは何かやりたいこととか、行きたい所とか、会いたい人とか、食べたい物とかないの?」
母「ない」
妹「テレビの旅番組見て、キレイな景色だなーとか、アレ食べたいなーとかないの?」
母「ない。食べたくない。薬を飲まないけんけ仕方なく食べよるんよ」
妹「さっきにぎり寿司食べよったやん!かなりの量あったよ!」
母黙る。
( ̄▽ ̄;)ああ~。
母「アンタたちも元気やねー」
私「ママも私たちの歳の頃は元気やったやん」
母は、私が子供3人連れて出戻った時、仕事に追われる私の代わりに子供たちの面倒を見てくれていたのだ。
母「あの頃は元気やったねぇ。授業参観行ったり保育園の送り迎えとかして、あの頃がいちばん楽しかったね」
私「第2の子育てが楽しかったんやね(苦笑)Kちゃん(私の弟)のチビたちがまだおるやん。面倒見てやればいいのに」
母「来たってどうしたらいいかわからん」
ん~そうかぁ。
3人で2時間半くらい話した。
わかったことは、母は今の暮らしがベストなのだということ。
元気な人を羨ましいと言いながらも自分は何もしたくない。
実際に何もしなくても誰にも文句を言われない暮らし。
母は「早くお迎えがくればいいのに」と言うが「痛かったり苦しかったりするのはイヤ」とも言う。
もうひとつわかったことは、私がやっている晩ごはんのデリバリー、通院介助、薬のセットは母のお役に立っているということ。
母はよく「私は、おとなしいけ何か言われても言い返せんのよ」と言っていた。
私はそれをずっと信じていた。
間違ってはいないが、その後ろに「言い返すことはできないが、言われたことも絶対やらない」ということを付け足さないと正解ではないのだ。
私が「寂しいんじゃないだろうか?」とか「私たちに気を使って言わないんじゃないだろうか?」などと一切考えなくてよかったのだ。
母は、おとなしくて、か弱い女性ではなかった。
母の呪縛がだんだん解けていく。
にぎり寿司を食べる準備をする母